D.Gray-manのクロウリーファンブログです。雑誌の感想などを書いています。(ネタバレは発売日以降)

カテゴリ: Dグレ世界の謎を考える  2009/01/09(金)
以下の描写が、方舟の鍵探しで垣間見えた
「ブックマン」の「記憶」に近いのではないかな、と思う。

以下、『奪われた記憶 ―――記憶と忘却への旅』
(著:ジョナサン・コット 訳:鈴木晶 発行:救龍堂)114~115ページより引用。

ある日、彼は落馬して、意識を取り戻すと、何一つ忘れなくなっている自分に気づく。あらゆる木のあらゆる葉を記憶しているばかりか、個々の葉を知覚するたびにその時を記憶し、それを思い出した各瞬間までも記憶しているのだった。
「われわれはテーブルの上の三つのワイングラスを一目で見てとる。だが、フネスには、ワインブドウの若枝、房、実がすべて見えた。
彼は、一八八二年四月三十日の明け方の、南の空の雲の形を覚えていた……。
彼は見た夢を全部、想像したものを全部、再生できた。
彼は、二、三回、まる一日を再生した事があった。
彼は私に《この世が始まって以来、全人類がもったより多くの記憶を僕ひとりでもっているんだ……》と言った。
そして『僕が夢を見るとき、それはあなた方の徹夜のようなものだ』とも言った。
また、明け方にはこうも言った、『先生、僕の記憶はごみ捨て場のようなものだ』

フネスと同じく、すべてを見て記憶してしまうSもまた、文のあちこちに的はずれなものが混入し、果てしなく脱線をし続け、枝葉末節の、枝葉が更なる枝葉を産み、筋が通らなくなり、訳がわからなくなるという状態で生活している。
 
彼もフネスのように、葉は見ても木は見えず、木が見えても森は見えない。ものの識別ができず、ほとんど何も理解することができず、すべての考えを機械的にイメージや色に変えるだけだ。
また、人々に関するすべての記憶から特定の個人に関する記憶を抽出するということができないため、意味ある人間関係を築くことができない。
仕事を持つこともできず、結局彼はプロの記憶術師になる。


「記憶術師」というのは、ブックマンの仕事に近い。


元々人間には、それだけの記憶を蓄えるだけの能力があるという。
だがそのままでは生活できない。だから人間には『忘却能力』が備わった。
忘却能力によって人は、生きる上で必要ない記憶をどんどん削除して
必要な記憶がちゃんと取り出せる効率のいい「普通の記憶力」を持つことができる。

そして『ブックマン』は、
そんな『忘却能力』が生まれつき壊れた一族なのではないだろうか。


今のラビは葉も木も森も、人もちゃんと普通に認識できているように見えるけど
そうなるまでには大変な苦労と訓練があったのではないかと思う。


→次記事:ブックマン一族について・後編 「職業選択」
→関連記事:「映像記憶」ができる人間とできない人間


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